気温が低く湿度が下がる冬は、
毎年感染性胃腸炎の流行期です。
これには、冬がウイルスの生存にとって
好環境であることがあげられます。
今回は、そんなウイルスを中心とした
感染性胃腸炎についてのお話です。
Vol.50_冬の感染性胃腸炎
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●感染性胃腸炎って?
感染性胃腸炎には、細菌性とウイルス性があります。細菌性胃腸炎は、カンピロバクター、病原性大腸菌、サルモネラ菌などの細菌が原因となる、いわゆる「食中毒」です。こちらは夏場に多く見られます。一方で、冬場に流行するのがウイルス性胃腸炎です。原因となるウイルスには、ノロウイルス、ロタウイルス、アデノウイルスなどがあり、このうちロタウイルス、アデノウイルスによる胃腸炎は乳幼児に多く見られます。ノロウイルスについては乳児から高齢者まで年齢に関係なく感染します。また2024年は、熊本の滝で水遊びしていた高校生や大分の湧き水を使った旅館の利用客など、大規模な感染も話題となりました。
●感染原因や感染経路は?
ノロウイルスは、汚染された二枚貝などの食品を生あるいは加熱が不十分なまま食べることで感染します。また、感染者の嘔吐物や便を触った手で口に触れることで感染したり、乾燥した嘔吐物や便が細かく空気中に飛散し、それを吸い込んで感染することもあります。
●症状は?
ウイルスによって異なりますが、ウイルスの潜伏期間は1日〜3日程度とされています。この間、人の腸内で大量に増殖するため、吐き気、嘔吐、下痢、腹痛、発熱などの症状を引き起こします。人によっては、胃痛や胃痙攣、頭痛や上気道炎(咳や鼻水)を伴うこともあります。また、嘔吐や下痢により脱水症状を起こすこともあるため注意が必要です。ノロウイルスの場合、症状は1日〜2日で治まります。
●治療法と予防法は?
ウイルス性感染胃腸炎には特別な治療法はありません(ロタウイルスについては乳幼児を対象にした予防接種ワクチンがあります)。吐き気止めや整腸剤の服用は問題ありませんが、まずは経口補水液で水分・塩分・糖分を補給し、脱水症状になるのを防ぎましょう。なお、感染性胃腸炎の原因ウイルスにはアルコール消毒の効果がありません。トイレの後、調理の際、食事の前には石けんと流水でしっかり手を洗いましょう。ドアノブやスマホの消毒、トイレは蓋を閉めてから水を流す点にも注意してください。また、嘔吐物や便を処理する際には、使い捨てのマスクと手袋を着用しましょう。汚染された箇所の消毒には、塩素系の消毒液が有効です。
●消毒液の作り方
ここで、ノロウイルスに対して有効な次亜塩素酸ナトリウムの消毒液の作り方をご紹介します。家庭で作れる内容なので、参考にしてください。
【用意するもの】
•500㎖のペットボトル+キャップ(蓋)
•家庭用塩素系漂白剤(ハイター等)
市販されている塩素系漂白剤の濃度は約5%です。500mlのペットボトルの水とキャップ2杯の漂白剤の原液をバケツなどに入れて混合します。次亜塩素酸ナトリウムは不安定のため、可能な限り作り置きはせず、その都度作成してください。嘔吐物や便が付着した場所をしっかり拭き取りましょう。なお、誤飲することがないよう、消毒液であることを明記してください。
●おわりに
感染性胃腸炎にかかると、体力の弱い乳幼児や高齢者は、ひどい下痢により脱水症状が生じやすくなります。さらに高齢者は、誤嚥により肺炎を起こす恐れもあります。早めに医療機関やかかりつけ薬剤師にご相談ください。
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