Vol.48_市販薬のトリセツ〜かゆみの塗り薬〜

eaf45b0914b60137406d007f14e5ed7f

肌の露出が増える夏は、
肌トラブルも多い季節。

汗かぶれや虫刺されなど、
人によっては乾燥する冬以上に
「かゆみ」に悩まされるかもしれません。
そこで、市販薬のトリセツ第3弾は
「かゆみの塗り薬」についてお伝えします。


●「かゆみ」のメカニズム

肌のかゆみは、何らかの刺激によって「ヒスタミン」という物質が細胞から分泌され、それが知覚神経の末端に伝わることで起こるとされます。この刺激には、乾燥や紫外線、花粉、ケミカル化粧品、虫刺され、不衛生な汗、衣類の締め付けや摩擦などの外的要因と、乾燥肌や敏感肌、アレルギー体質、生活習慣の変化、ストレスによる免疫低下、ホルモンバランスの乱れなどの内的要因があります。また、まれに内臓疾患や悪性腫瘍の症状としてかゆみや湿疹が起こる場合もあります。刺激によってヒスタミンが分泌されるわけですから、「かゆいから掻く」という行為は、知覚神経を刺激するため、かゆみの悪循環に陥ってしまいます。


●かゆみ止めの薬の種類

かゆみ(湿疹・かぶれ・乾燥等)に用いる薬には、医師の処方に基づいて出される医療用医薬品と、薬剤師にアドバイスを受けたりしながら自分で購入する市販薬(OTC医薬品)とがあります。かゆみの原因が明らかな場合や症状が軽い場合には市販薬で対応できます。薬のタイプも、赤みや腫れなど皮膚の炎症を抑える「ステロイド薬」、強いかゆみを伴う場合「ステロイド薬+かゆみ止め」、掻き壊して皮膚が化膿している場合「ステロイド薬+抗生物質」、非ステロイドで原因物質ヒスタミンをブロックする「抗ヒスタミン薬」、皮膚の乾燥を防ぐ「保湿剤」など、症状に合わせて様々です。


●塗り薬の剤型と特徴

かゆみの塗り薬には、様々な剤型と特徴があります。乾燥する冬には軟膏を、夏には使用感の良いクリームやローションなど、季節や症状によって使い分けることも大切です。

軟膏:皮膚刺激性が低く、保湿力が高いのですが、ベタつきがあり洗いにくいです。
クリーム:軟膏と比べてベタつきが少なく使用感も良く、水で洗い流せます。じゅくじゅくした患部にはなじみにくいです。
ローション:頭部など毛のある部位にも使いやすく、使用感が良く、よくのびます。
フォーム:泡状なので展延性が高く、広範囲に塗り広げやすいです。
スプレー:患部に直接使用でき、広範囲かつ手が届かない場所にも塗布できます。


●塗り薬の正しい使い方

薬の種類によっても異なりますが、塗り薬の場合、薬の効果を十分に得るための分量の目安として「FTU(フィンガーチップユニット)」という単位が用いられます。チューブタイプの軟膏やクリームなら、成人の人差し指の先から第一関節まで薬を乗せた量が1FTU(=約0.5g)に相当します。これが、成人の手のひら2枚分の面積を塗るのに適した量の目安です。ローションタイプの場合は、一円玉大が1FTUの目安となります。
また、塗り方や取り扱いにも注意が必要です。まず、使用前後には必ずきれいに手を洗いましょう。細菌の入り込みを防ぐため、チューブの口は直接患部につけず、いったん指に取りましょう。綿棒を使うとより衛生的です。使用期限を守るのはもちろんですが、以前使ってから期間が経っている場合、チューブの薬の先を少し捨ててから使用しましょう。また、使用期限内でも変色などが見られる場合は使用を控えましょう。


●おわりに

市販薬は手軽に購入できますが、自分自身でしっかりした管理が必要です。また「原因不明で繰り返す」「いつまでも治らない」「我慢できないほどひどい」「症状が広範囲」などのかゆみは、かかりつけ医や皮膚科専門医を受診しましょう。掻爬(そうは)による傷がある、ステロイドが気になるなど、自分で判断がつかない場合は、お近くの薬剤師まで気軽にご相談ください。


薬剤師会_DATA_201910