前回、風邪薬のトリセツ第1弾として、
薬の種類・薬効について解説しました。
今回は、そんな風邪薬の副作用や
社会問題になっているオーバードーズなど
身近にある薬だからこそ知っておきたい
危険性について解説します。
Vol.47_市販薬のトリセツ〜風邪薬編その②〜

●オーバードーズとは?
「オーバードーズ」という言葉をご存知ですか。社会問題になっているので、耳にしたことがあるかもしれません。オーバードーズは“薬の過剰摂取”を意味します。近年、若者を中心に市販薬の乱用が広がっており、2021年に高校生を対象に実施された調査では、高校生約60人に1人が、過去1年以内に市販薬の乱用経験があると答えています。背景には、大麻などの違法薬物や睡眠薬などの医療用医薬品に比べ入手しやすいことがあり、「気分が晴れるようにするため」「パフォーマンスを上げるため」などが、過剰摂取に至る理由として挙げられています。
●オーバードーズの危険性
薬には必ず用法・用量が定められています。これは、臨床試験を重ねて“安全性が確認されている”用法・用量なのです。本来の目的以外での服用や過剰量の服用は、副作用による体への悪影響が懸念され、依存症や場合によっては死に至るケースもあります。中でもオーバードーズに使われやすいのが、コデイン系の咳止め薬です。これは中枢神経に働きかける薬のため、めまい、眠気、吐き気、便秘、意識消失、痙攣発作、呼吸困難・呼吸停止などの症状が起こりえます。さらに自覚症状がなくても、過剰摂取は肝臓や腎臓に多大な負担を与えているので、深刻な臓器障害になっている可能性もあります。こうした現状を受け、厚生労働省は20歳未満に風邪薬など乱用の恐れがある市販薬を販売する場合、大容量・複数個の販売を禁じる規制案を固めました。また、日本薬剤師会では、薬物乱用の危険性や医薬品の適正使用を伝えるため、小学校から高等学校までの児童・生徒へ薬物乱用防止教室を開催しています。
●その他の風邪薬の注意点
風邪薬をはじめとした市販薬には、オーバードーズ以外にも気をつけるべきことがあります。
【アセトアミノフェン】
解熱鎮痛剤の代表的な薬剤です。安全で小児にも使えますが、過剰量の服用は肝障害の危険性があります。
【抗ヒスタミン薬】
くしゃみや鼻水などの鼻の症状に使用されます。症状を抑える効果が高い一方、副作用も起こりやすい第一世代抗ヒスタミン薬では特に、眠気、集中力の低下、認知機能の低下が起こりやすいため、小児や高齢者の使用には適さず、車の運転や高所での作業も避けねばなりません。また、副交感神経の働きを抑える抗コリン作用も併せ持つため、緑内障や前立腺肥大の方は症状悪化の恐れがあります。
【漢方薬】
副作用が少ないと思われている漢方薬ですが、だからと言って何種類も服用すると、成分の過剰摂取となり、思わぬ副作用が出る場合があります。
中でも持病のある方や妊娠・授乳中の方、小児、高齢者の方は、市販薬といえども注意点は多いため、なるべく自己判断は避けましょう。
●おわりに
今回は、風邪薬の危険性についてお話しました。オーバードーズは、若者に限ったことではありません。例えば「早く薬が効いてほしい…」と切実な思いからであっても、決められた用量を1錠でも多く服用すれば、それはオーバードーズなのです。これがやがて乱用の引き金になり、代謝の落ちた高齢者においては、若者以上の副作用も懸念されます。適正な使用量を守って薬を服用することは、あなたの健康を守ることにも、その薬を必要としている人がきちんと薬を手にできることにもつながります。あなた自身やご家族が薬について悩んでいるなら、かかりつけ薬剤師まで気軽にご相談ください。
