Vol.44_脱水症を防ぐ!経口補水液のはなし

薬剤師会レポート_44

夏に気をつけたい脱水症。
その予防に良いとされるのが
「経口補水液」です。
経口補水液はどんな時に飲めばいいのか、
またどんな効果が期待できるのか。
今回は、猛暑を乗り切るために
ぜひ知っておきたい
『経口補水液』のお話です。


●カラダと水の関係

私たちのカラダの約60%は水分です。1日に約2.5Lの水分を循環させることで、生命維持活動を行っています。脱水症は、カラダに入ってくる水分より出ていく水分が多いことで起こる状態です。水分の5%を失うと、脱水症状や熱中症の症状が現れ、10%を失うと、筋肉の痙攣や循環不全などが起こります。そして20%の水分が失われると命の危険が高まります。特に高齢者は、体内の水分量が少ない、喉の渇きを感じにくい、腎機能が低下し水分調節がうまくいかないなどの理由から、脱水症が起こりやすくなります。なお、一日に必要な水分摂取量は、(表1)の式で計算できます。


1日に必要な水分摂取量
例)75歳で体重50kgの人の場合
25(ml/kg)×50(kg)=1250(ml/日)
※これには食事に含まれる水分量も含まれるため、
飲用分はそれを差し引いたものとなります。


●脱水症の治療と予防

脱水症の治療は、軽度であれば基本的に不足した水分を補うだけです。しかし、中等度や重度になると多量の電解質が失われていることもあるため、電解質と水分の両方を含んだ経口補水液や点滴によって治療を進めます。また、脱水を引き起こしている嘔吐や下痢などの病気の治療も並行して行うことになります。そんな脱水症の予防でまず大切なのが、こまめな水分補給です。屋内・屋外かかわらず、喉の渇きを感じていなくても、こまめに水分をとりましょう。一気にたくさん飲むのではなく、1回にコップ1杯程度(150〜250㎖)の水を、起床時、運動後、入浴後、就寝前など1日6〜8回に分けて飲むのがオススメです。

●経口補水液とは

経口補水液とは、医学的知見から配合設計された飲料です。脱水のときに多量に失われてしまう水と電解質(ミネラル成分)、浸透圧を調整してこれらを素早く吸収するためのブドウ糖が必要量含まれています。脱水症は、適切なタイミングで経口補水液を飲むことで、ある程度予防できるとされています。この経口補水液ですが、簡単に自宅で作ることもできます。材料は【水1ℓ】【砂糖大さじ4杯】【塩小さじ半杯】のみで、水に砂糖と塩を入れて溶けるまで混ぜるだけです。お好みによってレモン汁などで風味づけしてもOKですが、分量を間違えると期待した効果は得られません。また、手作りのものは腐敗しやすいため、必ずその日のうちに飲み切りましょう。

●知っておきたい注意点

経口補水液の代用品として思い浮かべがちなスポーツドリンクですが、経口補水液に比べて塩分が少なく、糖分が多くなっています。このためカラダへの吸水スピードが考えられた経口補水液よりも吸収の速度が遅く、大量に飲むことで血糖値が上昇することも考えられます。スポーツドリンクは、スポーツ時など汗をかく場面での水分補給に用いましょう。また、経口補水液を日常的に飲んでいる方も注意が必要です。経口補水液にはナトリウムやカリウム、糖分が含まれるため、高血圧や糖尿病、腎臓病などの疾患がある方が毎日のように飲むと、症状を悪化させてしまう恐れがあります。


●おわりに

特に高齢者では、「トイレの回数が減った」「食欲がない」「暑いのに汗をかかない」「日中寝てばかり」などは脱水のサインです。気になる症状は医師・薬剤師に早めに相談し、今年の夏を元気に乗り切りましょう。


薬剤師会_DATA_201910