Vol.43_春から始める運動療法[骨と筋力アップ]

薬剤師会レポート_43

私たちの身体は、年齢を重ねるとともに
骨の強度や筋力が低下していきます。
しかし、CHIC世代であっても
適切な食事や適度な運動を行うことで
低下のスピードを緩めることができます。
今回はそんな運動療法のお話です。


●加齢による骨密度の低下

骨密度(骨量)は一般に、20歳代をピークに40歳代頃まで維持、その後徐々に低下していきます。骨も常に代謝を繰り返していますが、古くなった骨を壊す働きに新しい骨をつくる働きが追いつかなくなると、骨の内部がスカスカになる「骨粗鬆症」が起こりやすくなります。また、女性の場合は閉経後の女性ホルモンの減少も、骨密度を急激に低下させる原因になります。骨粗鬆症になると骨折しやすくなるため注意が必要です。特に腰椎や大腿骨の骨折は、寝たきりの原因になりかねません。加えて、骨粗鬆症は移動機能の低下した状態を指す「ロコモティブ・シンドローム」の主要原因でもあります。

●骨を強くするための運動

骨は、運動により大きな負荷をかけること、それを繰り返すほど強くなることがわかっています。例えばジャンプ、縄跳び、ジョギングなどがオススメです。ただ、高齢になると腰や膝を傷める可能性があるため、ウォーキングや水泳、背筋運動、片脚立ち、スクワットなどを継続的に行うことも効果が期待できます。散歩やこまめな家事の習慣も生活の中に取り入れてみましょう。


骨を強くする


●加齢による筋力の低下

加齢とともに筋力やそれに伴う身体活動は低下していきます。それ自体は自然なことですが、進行することで「フレイル(虚弱)」と呼ばれる健常と要介護の中間の状態になってしまったり、筋肉量が減少し日常生活が困難になる「サルコペニア(筋肉減少症)」になってしまう可能性があります。自然な老化現象と治療や介護が必要な状態は異なりますので注意が必要です。体重が減ってきた、ふくらはぎが細くなってきたなどのサインを見逃さないようにしましょう。

●筋力アップのための運動

筋肉を減らさないことは介護予防や転倒予防の観点からも重要で、CHIC世代でも適切な負荷の筋力トレーニングを継続することで、筋力アップは可能と言われてます。ただ、高齢になると筋組織が若い頃に比べて傷つきやすく、ケガや痛みにつながる恐れがあります。腹筋運動、腕立て伏せ、スクワット、ダンベル体操など、レジスタンス運動と呼ばれる運動を比較的負荷の小さい範囲で繰り返しましょう。日常的なウォーキングや活動的な生活習慣で、筋力トレーニングでつけた筋肉を使い続けることも大切です。


筋力アップ


●おわりに

骨の強化と筋力アップには、運動はもちろんバランスのとれた食事も大切です。骨にはカルシウムをはじめビタミンDやビタミンK、筋力には同じくビタミンDやたんぱく質も重要な栄養素になります。また、体内でビタミンDを合成するには、適度に日光に当たることもオススメです。ただ、服用中の薬によってはビタミンKを控えた方がよかったり、骨粗鬆症の薬であるビスホスホネート製剤は歯科治療に影響することもあります。まずはかかりつけの医師・薬剤師に相談してください。過ごしやすくなる春は、運動に最適です。ぜひ、骨(こつ)骨(こつ)と貯筋(ちょきん)して、QOL(生活の質)を維持しましょう。


薬剤師会_DATA_201910