Vol.42_冬の肌トラブル

薬剤師会レポート_42

肌トラブルを引き起こす原因には
さまざまなことが考えられます。
そのひとつが季節によるもの。
中でも冬は一年で最も注意すべき季節です。
今回は、そんな冬の肌トラブルのお話しです。


●肌トラブルが起こる原因

肌には通常、バリア機能が備わっていて、肌の乾燥を防ぐとともに外部のさまざまな刺激から体を守っています。この機能を維持するために大切なのが「皮脂」「角質細胞間脂質」「天然保湿因子」と呼ばれる物質で、これらが少なくなると肌が乾燥しやすくなり、外からの刺激を受けやすくなります。乾燥を引き起こす原因としては、浴びると肌のバリア機能が損なわれる【紫外線】、体の洗いすぎや冷暖房の効かせすぎ、不規則な睡眠や偏食などの【生活習慣】、アトピー性皮膚炎などの【疾患】、年齢を経るにつれてバリア機能が低下していく【加齢】が挙げられ、特に多くの方が肌のコンディションの悪さを実感されるのが、一年で最も乾燥する季節、つまり【冬】です。

●冬の肌トラブルとは?

「顔がかゆい、赤い」「肌がカサつく、つっぱる」「手が荒れる」…冬に肌が乾燥するのは、体温と外気に温度差があり湿度が低いため、皮脂の分泌量が減って肌の水分が蒸発しやすくなるからです。また、暖房の使いすぎも室内の湿度低下につながります。この他、運動量が低下することも汗や皮脂の分泌量を減らし、皮脂膜を作らせにくくします。なお、冬は紫外線を意識しなくなりがちですが、冬でも夏の半分程度の紫外線が降り注いでいます。これらの理由から、冬は最も肌トラブルに注意すべきで、それらは放っておくと「皮脂欠乏症」などの疾患を引き起こしかねません。

●保湿剤で乾燥予防

こうした冬の肌トラブルを防ぐために、保湿剤を活用しましょう。保湿剤は、肌に潤いを与えたり、水分が逃げないように働く薬です。被覆性(肌の保護効果)の高いものから順に、軟膏、クリーム、ローション、フォームと種類があり、冬は保護効果の高い軟膏やクリームを選ぶなど、季節や症状に合わせて使用するのがおすすめです。軟膏やクリームは人差し指の先端から第一関節まで、ローションは一円玉の大きさが手のひら二枚分くらいの範囲に塗れる量です。いずれも優しく塗ります。擦り込む必要はありません。なお、保湿剤は皮脂が洗い流され水分が蒸発しやすくなっているお風呂上がりに塗るのが効果的です。

●日常生活で気をつけること

まず入浴ですが、温度が高いお湯だと皮脂が落ちすぎてしまうため、冬は40℃以下が適温です。石鹸やシャンプーはしっかりと泡立て優しく洗い、風呂上がりはタオルで柔らかく押さえるように拭きましょう。室内では、空気が乾燥しないよう加湿器などで適度な湿度を保ちましょう。すでにかゆみがあるなら、刺激の少ない肌着を選ぶことも大切です。アルコールや刺激物の摂取は体を温め、かゆみを強めてしまいます。また、質のいい睡眠やバランスの取れた食事は成長ホルモンの分泌を促し、肌のターンオーバーのサイクルを整えます。外出時には、SPF30以下のもので大丈夫なので、紫外線対策も忘れないようにしましょう。さらに近年は、呼気で蒸れていたマスク内の湿度がマスクを外した途端に乾燥を引き起こしたり、マスクに皮脂が少しずつ削られたりといったマスクによる肌トラブルも増えているため、より一層日常生活や保湿剤での乾燥予防が必要とされます。

●おわりに

肌の潤いを保つための物質が減少しているCHIC世代では、特に冬の乾燥予防は不可欠です。正しいスキンケアをしているつもりでも肌の状態が改善しないなど、肌トラブルの中には別の病気が隠れている可能性もあります。発赤や湿疹、刺激感、肌の隆起などがある場合は、皮膚科やかかりつけの薬剤師へ気軽に相談してみましょう。


薬剤師会_DATA_201910