小児期におけるアレルギー性疾患の進展する様子をマーチに喩えた
「アレルギーマーチ」という言葉をご存知ですか。今回は「そもそも
アレルギーとは?」も含めた「アレルギーマーチ」についてのお話です。
Vol.39_アレルギーマーチとは
●そもそもアレルギーって?
私たちの体には、細菌やウイルスなどの病気を引き起こす異物から体を守るための「免疫」という仕組みが備わっています。この仕組みが、食物やダニ、スギ花粉といった特定の異物に対して過剰に反応し、くしゃみ、発疹、呼吸困難などの症状が引き起こされることを「アレルギー反応」と言います。
代表的なアレルギー疾患には、食物アレルギー、アトピー性皮膚炎、気管支喘息、アレルギー性結膜炎、アレルギー性鼻炎(花粉症)などがあります。
例えば、みなさんの中には「サバに当たった」という話を聞いたことがあるかもしれません。サバを食べて全身にじんましんが出ることがありますが、これは鮮度の落ちたサバに発生したヒスタミンが原因、つまり食中毒のため、アレルギーではないのです。同じく、長芋を食べて口周りが赤くなったり痒くなったりするのも、長芋に含まれるアセチルコリンという物質が原因のため、免疫が関与するアレルギーではありません。
●アレルギーマーチって?
アレルギー疾患には、発症しやすいアレルギーが年齢によって異なるという特徴があります。多くの方が、まず乳児期にアトピー性皮膚炎を発症し、その後、食物アレルギー、気管支喘息、アレルギー性鼻炎、アレルギー性結膜炎というふうに発症していくのです。全ての方がこの流れになるわけではありませんが、年齢によって次々とアレルギーが発症していく様子を行進に例えて「アレルギーマーチ」と呼んでいます。またアレルギー疾患は、親がアレルギー疾患にかかったことがあるなどの遺伝的な要因と、子どもの成長に伴う環境的な要因があると考えられています。
●アレルギーマーチの予防法
様々な要因があるアレルギーですが、近年の研究により少しずつ予防法もわかってきています。例えば「アトピー性皮膚炎」は、新生児期からの保湿剤塗布により発症リスクが3割低下し、逆に皮疹の改善が遅れると食物アレルゲンへの刺激が進行してしまいます。「食物アレルギー」では、加熱鶏卵を少量ずつ食べさせることで、卵アレルギーの発症率が減少します。また「気管支喘息」は、手洗いなどのウイルス感染症対策が重要で、同時にダニ対策などの環境整備が求められています。ただ、個人差があり、全てのアレルゲンを生活から取り除くことは困難であるため、いずれの場合もアレルギー疾患の発症に「できるだけ早く気づくこと」と「適切な治療と管理により症状をコントロールしていくこと」が大切です。
●おわりに
アレルギーはアナフィラキシーや喘息死といった危険性がある一方で、成人してからでも適切な治療を受けることで軽減できることがわかっています。しかし、内服薬も外用薬も正しく使わなければ期待する効果は得られません。薬剤師は、処方薬のことだけでなく、様々な疾患の予防や日常生活の相談にも関わっており、アレルギーについても、治療全般において重要な役割を担っています。気になることがあれば、ぜひ気軽に薬剤師に相談してください。そしてCHIC世代のみなさんは、お子さん、お孫さんのアレルギーについても気をつけてあげてください。