専門性と正確性 Expertise and accuracy

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南青山デンタルクリニック広島医院の山田院長が、
各業界のスペシャリストと対談するレポート企画。

今回は、測量・設計・境界確定の
プロフェッショナルである木村倫子さんを招き、
業界ならではの専門性や正確性について
語っていただきました。


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機械の出す値であっても、
再測は欠かさない。

木村 倫子代表


山田院長(以下山田):まずは木村さんの会社について教えてください。
木村代表(以下木村):はい、建設コンサルタントとして、建物や団地から橋、トンネルまで、それらの基礎となる測量や設計を行っています。また、土地家屋調査士業も行っております。土地家屋調査士業は、不動産の表示の登記をしております。登記が絡まない身近なところでは、土地の境界を決める調査です。不動産には全て境界があります。それがハッキリしていないと売買はできません。ですが、昔からの土地だとそれが曖昧でトラブルや裁判になることもあります。こうした争いをなくすため、私たちの仕事があります。
山田:かなり専門的なお仕事ですね。その専門性を維持したり高めたりするために実践されていることはありますか?
木村:そうですね。測量業界は人材不足が加速する一方、測量機器はどんどん発達してきています。測量は現場仕事が中心なので、まさにそこの部分の人材不足を補うための進化です。ですがそうなると、デジタル化のスピードについていくのがかなり大変です。また、これまで職人の世界だったものがオペレーター化された仕事に変容してきてもいます。この2つを解消するため、機器の講習会や勉強会に参加したり、一方で測量技術を維持・向上させるため積極的に資格取得に励んでいます。
山田:わかります。歯科業界もどんどんデジタル化していっているので、日々勉強しないとついていけません。例えば「インビザライン」(※)なら、資料やメーカーから得る情報だけでなく、症例数の多い先生のセミナーにも参加しています。大変ではありますが、最先端についていくことによって、正確性を高めていけるメリットは感じています。ワイヤー矯正や昔のマウスピース矯正では実現できなかった0.25㎜単位で歯並びを調整できるようになったんですから。
木村:矯正以外の分野ではどうですか?
山田:顎関節症の勉強もずっと続けています。これは、歯列矯正を行う上で、噛み合わせが悪い人ほど顎関節に負担がかかっているとわかったことがきっかけです。食いしばりの癖がある人は、下顎が後方に位置していることが多く、すると舌根も奥(後方)に位置してしまうので、気道を塞いでしまうことがあるんです。このため、矯正治療を行う際は見た目はもちろんですが、噛み合わせをかなり意識します。上下、前後もそうですが、左右の噛み合わせの癖で体全体に歪みが生じることすらあるのが歯並びですから。ところで、私は口の中というミクロな世界で医療を行っていますが、木村さんはマクロな世界でどう正確性を担保しているのですか?
木村:実は弊社では、どんなに大きな土地も1㎜単位で測っています。現場でミリ単位の指示を出すと驚かれることもあるんですが、土地は高価なものなので、ミリ単位の正確性が大事だと考えています。このため、測って出た数値に対して再測とチェックを繰り返します。機械が出してくる数値って鵜呑みにしてしまいがちなので、同じ機械でも測量方法を変えて測ってみたり、あえてテープというアナログな手法を組み合わせたりもします。山田先生は正確性についてどう意識されていますか?
山田:今のスキャニング技術はどこが強く当たっているか噛み合わせの分布までわかるんですね。その分布が均等になるよう細かく調整しています。先ほども申しましたが見た目以上に噛み合わせは大事なので、人によってはちょっとしたズレに違和感を感じるかもしれない。こうしたことを防ぐために細心の注意を払っています。



今のマウスピース矯正は
0.25㎜単位で歯を動かせる。

山田 英治院長


山田:ちなみに、親知らずがその人の噛み合わせの要だったりするケースもあるので、歯並びが悪い方は親知らずの抜歯にも気をつけていたりします。
木村:そうですか。お互いの業界で機器による技術進歩がめざましいですね。もう少し詳しく教えていただけますか。
山田:はい。「インビザライン」に使用する3D光学スキャナーでは「iTero Lumina」という最新機器を導入しています。従来の印象材を使った型取りが不要なので、患者さんの負担が少なく、スキャンするだけで精密な歯型画像を確認できます。口腔内カメラ内蔵なので口の中をわざわざ撮影する必要もなくなりました。他にも矯正の機器ではないですが、「オーラルック」という装置を導入しました。こちらは口腔粘膜疾患が口内炎なのか舌がんの疑いがあるのかなどを蛍光観察できるものです。つまり悪性のものはスクリーニングできるため、視診や触診の補助ツールとして役立っています。木村さんの業界はいかがですか?
木村:人工衛星を利用した測位システム「GNSS」や、電波によって相対的な位置と地図を同時構築する「SLAM」など、測量の精度は上がり続けています。以前は点群でしか表示されなかったものがマッピングになってより鮮明にわかるようにもなりました。それから3Dドローンを導入したのも特筆すべき点でしょうか。災害時、当社のような会社はすぐに現場に向かい、測量しなければなりません。測量をしないとその後の復旧のための設計ができないからです。でも、実際災害が起こった現場はかなり危ない状況です。ですからそこにドローンがあることで、危険な場所に立つことなく、スタッフの安全を守りながら測量することができます。なお、3Dドローンは崩れかけている途中でもデータを取得でき、どの程度土砂に埋まっているか、あとどれくらいで河川のオーバーフローが起こりそうかということまで見ることができます。
山田:すごいですね。ちなみに地震によって地形がズレた場合、土地の境界はどうなるんですか?
木村:災害の場合、そういうケースもあります。地震による地殻変動で土地に歪みが生じると、国土地理院からこの一帯を何メートル補正してください、などの指示が出るんですよ。これをセミ・ダイナミック補正と言います。
山田:なるほど。そういう場合にもちゃんと基準があるんですね。実は歯並びにも歯科的に理想とされる基準があります。前歯は少し斜めになっているのが、下顎をスムーズに滑走させるためには良いんです。ですが患者さんの中には垂直な前歯を理想とする方もいらっしゃいます。このあたりは患者さんとしっかり話し合いながら納得していただけるゴールを一緒に探していくことになります。
木村:その点、土地家屋調査士の境界は中立の立場でしか調査できません。公法上の境界といい境界は決まっているものなので、土地家屋調査士にできるのは境界を示すこと。依頼者の味方ではないんですね。ただ、その中でもきちんとした説明と取るべき対策をお伝えすることで、多くの方は納得していただけます。
山田:寄り添い、話を聞き、理解することはどの業界でも大切なんですね。木村さん、本日はありがとうございました。


(※)マウスピース型の装置を使用した矯正治療。口腔内3Dスキャナーによってオーダーメイドでアライナーを作製し、装着。歯が移動していくのに合わせて新しいアライナーに取り替えていく。自由診療。詳しくはコチラからマンガで読めます。




木村代表のコスモエンジニアリング株式会社についてはこちら
https://cosmo-en.co.jp/



南青山デンタルクリニック
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