藤崎:日本は一斉の保育、一斉の教育で、集団に当てはまることが良しとされてきました。ですが、それだと子どもがやらなければならない課題が見えてこないんです。自由にすることで、初めて子どもが自発的にやりたいことが見えてきます。それを子どもが自ら選んで自分自身の力で成長していくことがこれからは必要だと考えています。
山田:“自由”というワードが出ましたが、よく患者さんから「うちの子は歯磨きが嫌いで…」という話を聞きます。歯科では歯ブラシを持たせて口の中で遊ばせるという方法があり、遊ぶことで歯ブラシに慣れさせます。子どもに対しては強制するほど反発して嫌になるのかなと、今の先生の話から思いました。
藤崎:その方法はいいですね。歯ブラシや鉛筆の持ち方には手先の成長が現れます。例えばハサミは危ないからとずっと取り上げているとうまく使えないままです。ところで私も多くの親子に関わるので伺ってみたかったのですが、虫歯ってやはり遺伝ですか?
山田:虫歯は遺伝ではなく“菌”が原因なんです。口の中の菌の種類や多さによって、起こる疾患や可能性も変わってきます。50歳まで虫歯知らずで歯医者に通ったことのない人が、全ての歯槽骨が溶けているとわかり総入れ歯になったケースもあります。これは虫歯菌が少なく歯周病菌が多かったためです。
藤崎:では菌を移してしまう小さい頃の箸の共有はよくないんですね。
山田:そうは言っても愛情表現なので…。だからこそ、親自身が口の菌のコントロールをしたり、歯磨きという習慣を子どもに“遺伝”させていくことが大切かなと思います。
藤崎:最近は歯の矯正をする若い方も増えてきていますよね?
山田:はい。特に小学6年生頃まではI期治療と言われ、噛み合わせの土台、歯が並ぶスペースを作るために大事です。この土台がしっかりしていれば、たとえ中学生以降に骨の成長があっても、大きく歯並びを崩すことはないとされています。さらに噛み合わせ(歯並び)は正しい姿勢、身体能力の向上、脳内の血流にも関係していて、集中力を高めるという報告もあります。
藤崎:先ほど「集中現象」について話しましたが、モンテッソーリ教育でも集中力は非常に大事です。SNS全盛の時代を生きる今の子どもたちは、その集中を削がれる生活の中で、集中力を自分で獲得していかなければなりません。これは各家庭で「食事中はスマホを見ない」「ゲームは1時間まで」など、集中の邪魔になるものをできるだけ排除してあげることが必要だと思います。
山田:近年はスマホを見ながら授乳する方も増えていると聞きます。これは赤ちゃんを抱く姿勢が自然と悪くなり、赤ちゃんは乳を飲みにくくなります。結果、吸う力が弱いまま育ち、口呼吸になり、集中力の低下が懸念されます。乳児期にはこうしたことも気をつけてほしいですね。藤崎先生、他に親として意識しておきたいことはありますか?
藤崎:親は「この子は何をしたいのか」と観察し、見守ることが大事です。一番いけないのは、自分がやった方が早いしきれいだからと、親が代わりにやってしまうこと。先回りして子どもの選択肢を奪わないでください。それと、モンテッソーリ教育では子どもも一人の人間として接します。だから子どもが何かできたときに褒めません。子どもは自分で課題を見つけて解決しただけ。大人に褒められたかったわけではないのですから。ただ、認めてあげることは大切だと思います。
山田:学びの多い時間となりました。先生、本日はありがとうございました。
(※)6歳〜10歳頃の永久歯が生え揃っていない時期には「プレオルソ」「インビザライン ファースト」、その後は「インビザライン」など、マウスピース式の矯正治療が複数あります。いずれも自由診療。マウスピース式の矯正について、詳しくはコチラからマンガで読めます。