山田院長(以下山田):まずは沖本さんが提唱する「5分会議」®について、改めて教えてください。
沖本さん(以下沖本):例えば、いつも同じ人しか発言しない会議や、ダラダラと長いだけでまとまらない会議って、多くの方が経験したことがありますよね。「5分会議」®では、参加者全員に発言してもらう方法や、相手の意見を否定せず、かつ自分の意見も伝えられる方法、相手自身に良くない点を気づいてもらう方法などを伝えています。
山田:なるほど。そのメソッドを開発するに至ったきっかけなどはあったんですか。
沖本:私自身、無駄に会議が長くて揉めてばかりの組織にいた経験があって。納得いかない異動や、果ては会社の倒産まで経験しました。そんな折にたまたま参加したコミュニケーションのセミナーで、「これが自分の中にあれば、会社の倒産も防げたのでは」と気づいたんです。そこからコミュニケーションについてたくさん学びました。でも、学びって現場ではうまくいかないんですよね。だからさらに研究を続けて、会議にこそ学ぶべきコミュニケーションが詰まっているとわかり、会議そのものをメソッド化するに至りました。
山田:うちのクリニックは小規模で、男性も私1人。会議らしい会議というものも行っていませんが、ミーティングでもなかなか積極的な意見は出てこないかな…。
沖本:そういった職場もたくさんあると思います。“会議”という堅い場じゃなくても、「あの人が言うなら、まぁいっか」という場面ってありますよね。でも、これをそのままにしておくといずれ「あの人の意見が通るから(自分は)考えなくてもいっか」になっていくんです。一概に年齢では括れませんが、特に若い方は考えること自体を敬遠する傾向にあると、セミナーを重ねていると実感します。
山田:確かに、昔の若者は今より“察する力”に優れていたような気がします。考えるから察することができる。そして時には私に意見もしてくれていましたね。ところで、沖本さんがコンサルティングを行う「1分トーク」についても教えてください。
沖本:これも「5分会議」®の延長にあるんですが、私自身が人の長い話を聞くのが苦手で…だから人の話が短くなれば自分も幸せだし(笑)、会議も一人一言で発言してもらう方が良いよね、という考えがスタートです。そのためには、どうしてほしいかを最初に伝えるといったテクニックが必要です。
山田:あとは、「伝えたいことは繰り返し言う」もですね。沖本さんの著書にありました。私も長く話す方ではないですが、言ったことを相手が覚えていないこともあり、著書には早速活用できるものが多いなと拝読していました。スタッフ教育も自慢できるほど熱心ではありませんが(笑)、確かにポイントだけは伝えておくと、スタッフのみんなが自発的にポップを作ったりしてくれています。
沖本:それが良いんですよ。みんなができることを互いに教え合い支え合うのが組織ですから、細かく指示を出すより自発的にみんなが動く環境、わからないことをすぐに聞ける環境が大事なんです。その雰囲気を作るのがリーダーであり、そこの土台がやっぱりコミュニケーションなんです。「5分会議」®とは、組織にヒビが入らないために、会議が脱線しないためにその方法を伝える、言わば治療法ではなく“予防法”ですね。
山田:素晴らしいですね。歯科でも、例えば歯周病にならないための歯科健診など、治療より“予防”に重きを置いています。だからこそ、歯以外に痛むところはないか、クセはないか…と、患者さんに細かく質問させていただいています。どこに隠れた症状があるかわかりませんから。