野間さん(以下野間):1号店の時からなので、先生と出会ってもう10年になりますね。
山田院長(以下山田):そうですね。接客の素晴らしさにファンになり、以来、気持ちを整理したい時などに通わせてもらっていますね。私自身、野間さんの接客を勉強もさせていただいています。ところで、歯科は緊張して来られる方が多いので、いかに緊張をほぐして患者様の悩みや問題点を聞き出せるかが最初の段階になります。歯科用語には難しいものも多いので、それらを噛み砕きお話することで少しでも緊張がなくなり笑顔になってもらえるよう心がけています。バーと歯科でシチュエーションは異なりますが、ホスピタリティについて野間さんはどのようなことを心に留めていらっしゃいますか。
野間:実はバーもホスピタルと呼ばれ、歯科と共通するものがあるんです。「今日はちょっと嫌なことがあった…」そんな日にはリフレッシュできるように医療とは別の意味での治療を心がけています。そのために、お客様の顔色や会話、どんな食事をされてご来店いただいたのかなど、様々なことを推測しご提供するものを変えたりもします。バーも病院的な役割を秘めている空間で、だから声のトーンから多くのことを察するのはきっと先生と共通している部分です。
山田:飲食店にはよく行きますが、料理はもちろんその店の接客対応が今後も通う通わないの私の基準です。野間さんのバーが「誰を連れて行っても大丈夫」と思えるのは、そんなマインドがあったからなんですね。技術面の向上は当然ですが、私はそうした飲食店での接客やトラブルの対処法を自分に置き換えて勉強したりします。同時に接遇や言葉遣いについての本から学ぶことも多いですね。
野間:「バーは人なり」という言葉があります。お客様はバーテンダーを求めて訪れることも多いので、私も気兼ねなく来れる場所、リラックスして楽しめる空間であるために、接遇については常に意識しています。お客様が帰って来れる場所、それを守っていくのが私の役割です。同時に、スタッフを集めて技術指導を行ったり、酒蔵や蒸溜所に赴いて生産者の思いを汲み取ることも忘れません。お客様へご提供するものへの知識は常に勉強して深めていかないといけませんから。
山田:素晴らしいですね。一方、コロナ禍ではお互い苦しい思いをしたと思います。歯科では健康のために来るはずの定期健診を控える方が多いという本末転倒な事態になりました。ただ、来院人数が減ったことで患者様一人ひとりとじっくり話す時間ができたりもして、それは新たな気づきでしたね。
野間:そうですか。私の業界はまずお酒が悪者という発信をされたので本当に辛い3年間でした。店を開けることでまたバーに悪いイメージがつくのが嫌で、苦しかったですが休業要請も全て守りました。ただ、こうしたことを経て「バーって楽しい場所だよ」「気軽に足を踏み入れていいんだよ」ともっと発信していかないといけないという思いに至りました。できることをしなければ、と。