中高年のための病気読本

中高年のための病気読本
健康寿命とは、健康上の支障がなく日常生活を送れる期間を指します。
厚生労働省「健康寿命の令和元年値について」によると、
令和元年の平均寿命は男性81.41歳、女性87.45歳に対して、
健康寿命はそれぞれ男性72.68歳(差8.73年)、女性75.38歳(差12.06年)。
広島県においては、全国で男性22位、女性43位と、特に女性は低位を推移しています。
全国的に平均寿命・健康寿命ともに延びているものの、その差は平均して10年前後。
老後の生活の質(QOL)を高めるには、この差を埋めることが重要です。
今回は、50代からのCHIC世代が気をつけなければならない数ある病気の中から
特に「高血圧症」「糖尿病」などについて専門医のお話を伺いました。
老いを止めることはできませんが、努力により下降を緩やかにすることはできます。
コロナ禍ですがその他の病気にも気をつけ、アクティブライフを満喫しましょう。


アクティブシニアのリアル「健康」アンケート

Q1.あなたはいま 健康だと思いますか?

Q1


Q2.将来の健康に不安はありますか?

Q2


Q3.その健康への不安は何ですか?(複数回答)

Q3


Q4.健康のために普段から行っていることはありますか?(複数回答)

Q4


【体験談】私はこうして病気を克服した!

●子宮頸がん…自分が納得いくまで、主治医に話を聞いたり病気についての情報を集めました。ネットは貴重な情報源でしたが、色々な意見の中から自分なりの答えをだしました。主治医の意見だけでなくセカンド・オピニオンを受け自分がこうしたい、という治療を選択し受け入れてもらえる病院をえらびました。通院期間だけが治療期間ではなく、結局は日常生活をどのように過ごすかが大切と思います。栄養バランス、適度な運動、ストレス解消等々…一般的に体にいいと言われていることをコツコツと積み重ねている毎日です。
(TKさん・女性)

●アトピー性皮膚炎。仕事のストレスから、全身に酷いアトピー性皮膚炎の症状が出て、仕事を続けられなくなり退職して、転地療養しました。食事療法メインで回復して、食事などの栄養や飲水など体に取り入れるものの大切さに気付かされました。
(NRさん・女性)




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心筋梗塞や脳梗塞のリスクを高めます。

血圧値は日々、時間ごとに変動するものです。だから健康診断などで1回測って終わりではなく、ご自宅で習慣的に測ることが大切です。また、高血圧症は心筋梗塞や脳梗塞など体に重大な障害をもたらす合併症のリスクを高めます。質の高い臨床研究(SPRINT試験、STEP試験)では、しっかり血圧を下げた方がこれら合併症の発症が少なくなるという結果が出ていますので、薬に抵抗がある、副作用が心配という人もいらっしゃると思いますが、高血圧症に関しては薬を増やしてでも血圧を下げた方が心筋梗塞や脳梗塞のリスクを減らせると考えます。なお、60代以降になると上の血圧は上がり、下の血圧が下がってくる場合がありますが、これは加齢によって血管が硬くなってきたためです。下の血圧が低いから安心ということではありませんのでご注意ください。


主な症状は?

上の血圧が140㎜Hg以上、下の血圧が90㎜Hg以上(自宅計測の場合、上が135㎜Hg以上、下が85㎜Hg以上)が常態となっているのが高血圧症です。自覚症状がないのが特徴で、これが「サイレントキラー」と呼ばれる所以です。「高血圧による頭痛」を訴え受診される方もいらっしゃいますが、高血圧脳症を除き、一般的に通常の高血圧では頭痛は起きないとされています。

原因は?

遺伝、年齢、生活習慣が主な原因です。塩分の摂取量に対して血圧が上がりやすくなる食塩感受性も遺伝が関係します。有病率は男性が高くなりますが、女性も女性ホルモンが変化する閉経後に高まります。また、血圧を高めるホルモンが過剰に分泌される原発性アルドステロン症なども10%程度あり、これらは二次性高血圧と呼ばれます。

治療法は?

血圧が180/110㎜Hg以上など高リスクでなければ通常は生活習慣の改善を行います。1ヶ月後、自宅計測の血圧値が下がっていなければ、生活習慣の改善を強化し、薬物療法も取り入れます。薬も、血管を広げるもの、心臓への過剰な刺激を抑えるもの、利尿作用のあるものなど様々なタイプがあります。また、二次性高血圧は手術療法によって改善できる場合もあります。

予防法は?

1日の食塩摂取量6g未満を目標に、塩分の多い漬物、麺類、パン、加工肉はできるだけ避けましょう。野菜や果物は積極的に食べるのがおすすめです。過剰な飲酒を控え、タバコもやめ、適度な有酸素運動も心がけましょう。これらは高血圧症以外の病気にも重要な生活習慣です。特にコロナ禍で運動不足や食生活の乱れのある方は要注意です。


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単独で存在せず、怖いのは合併症です。

ライフスタイルに基づいた現代病の代表とされる糖尿病は、活動量によるものの年齢とともに肥満気味になる中高年に多い病気です。90年代には10人に1人と言われた脂肪肝も今は10人に4人とされます。若い頃より5〜10㎏体重が増えた方は一度専門機関でチェックしてみましょう。女性は閉経後に糖尿病になりやすいのも特徴です。また、糖尿病になると肝臓がんや大腸がん、膵がんといった消化器系のがんの発がん率も2割上昇すると言われるので、早期発見・早期対応が大切です。


主な症状は?

足の痺れや異常な喉の乾き、疲れやすさなどがあげられますが、近年は自覚症状のないまま健診や人間ドックを受け、血糖値の高さや尿糖から発見される方がほとんどです。また、感染症にもかかりやすくなるため注意が必要です。

原因は?

糖尿病には、膵臓でインスリンを生成できない「1型」と、生活習慣の乱れにより引き起こされる「2型」があり、現代人の約95%はこの「2型」です。肥満に伴う過栄養や運動不足、遺伝などが主な原因で、インスリンが効きにくい状態になっています。

治療法は?

「2型」の場合、1に運動療法、2に食事管理、3に薬物療法が基本です。同じ糖尿病でもインスリン抵抗性やインスリン分泌が保たれているかどうかにより内服薬が異なるため、まずは何が原因の糖尿病かを診断し、それぞれにあった治療法を見つけます。インスリン分泌が低下している場合、インスリン注射が中心の治療になります。

予防法は?

「2型」の方は、内臓脂肪をためないように運動や食事の栄養バランスを心がけましょう。運動では、スクワットなど筋肉に負荷をかけるレジスタンス運動を行った後に、早歩きなどの有酸素運動を行うのが効果的です。また、栄養バランスで大事なのが、食物繊維とミネラルです。素材重視の食生活を見直してみてください。


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中高年の特に女性に多い疾患です。

中高年以降に多い変形性膝関節症ですが、女性に多いのも特徴です。似たような症状で半月板損傷や関節リウマチ、骨壊死などもあります。これらの膝関節痛をきたす病気は徐々に悪化していき、一度すり減った軟骨は元に戻すことはできません。膝に違和感を感じたら早めの受診、早めの治療が重要です。


主な症状は?

初期には立ち上がり、歩き始めに膝の痛みを感じます。中期になると膝関節の可動域制限が出現し、正座や階段の上り下りが難しくなってきます。また炎症で膝周囲が腫れたり、水がたまることもあります。末期になると普通に歩いたり座ったりなどの日常生活にも支障をきたします。

原因は?

加齢や体重増加、太ももの筋力の衰え、過去のけがなどが原因で、膝関節の軟骨がすり減ることにより生じます。日本人に多いO脚も、膝関節の内側に大きな負担をかけてしまいます。

治療法は?

薬やシップを使ったり、サポーターや足底板装着、リハビリテーション、ヒアルロン酸注射などを行います。症状が改善しない場合は、関節鏡手術、骨切り術、人工関節手術などを検討します。

予防法は?

肥満気味の方は減量を行い、ウォーキングなどの日常的な運動を心がけましょう。自転車などもお勧めです。大腿四頭筋(太ももの前の筋肉)を鍛えると膝の負担が減ります。また、正座を避け、洋式トイレを使うようにするなどして膝の負担を減らしましょう。


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中高年の10人に1人が罹患する疾患です。

脊柱管狭窄症は50代から徐々に増え始め、有病率は10%程度と言われています。中には腰痛を伴わず下肢の痛みとしびれだけで発症し、他の疾患と間違われてしまうこともあるので、レントゲンやMRIで状態を適切に把握する必要があります。自己判断せず、気になる症状のある方は早めに専門医を受診してください。


主な症状は?

長時間立っていたり歩行したりすることで腰痛や足のしびれが出現する「間欠性跛行」が主な症状で、前屈みの体勢や座って休むと症状が和らぐという特徴があります。

原因は?

加齢に伴って背骨が変形することにより、脊柱管と呼ばれる神経の通り道が狭くなり、中の神経が圧迫されて痛みやしびれが引き起こされます。

治療法は?

症状によって薬物療法や神経ブロック治療、運動療法などの保存的治療の中から最適なものを組み合わせて進めます。排尿障害を起こしていたり日常生活に支障をきたしたりしている場合は、脊柱管を広げる手術を検討することもあります。

予防法は?

腰に負担をかける姿勢や動作を避け、適度な運動で筋力を維持することが大切です。腰をまっすぐ伸ばして立つと神経の圧迫は強くなるので、杖や手押し車、自転車を利用し、少し前屈みになるのがおすすめです。


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最低でも年に1度の検査で早期発見を。

白内障の手術は人工レンズが進化し、使う人工レンズによっては手術後、メガネがほとんどいらなくなります。一方、緑内障は手術をしても失った視野を取り戻すことはできませんので、眼科での定期的な検査が大事です。発症のリスクがあったり、発症したら早期に対応することが望まれます。


主な症状は?

緑内障の多くは、徐々に視野が狭くなっていく慢性の経過をたどります。視野の中で見えない部分が広がるイメージです。初期は自覚症状がありませんが放置すると失明に至ります。少数、目の痛み、視力低下、吐き気が急に起こり放置すると数日で失明に至る急性の経過をたどるものもあります。一方、白内障は、目が霞む、眩しいなどの症状があり、物が二重三重に見えることもあります。

原因は?

慢性緑内障は、遺伝や強度近視、全身の病気などが原因となることがありますが特定できないことが多いです。急性緑内障は、元々視力が良かった遠視の目や白内障の進行に伴うことがあります。白内障は、ほとんどが加齢に伴って起こる加齢性白内障で、その他先天性、外傷、糖尿病が原因となる場合もあります。

治療法は?

慢性緑内障は、まず点眼で進行を抑えますが、抑えられない場合は目薬の種類を増やします。それでも進行する場合や急性緑内障の場合はレーザー治療や手術を行います。白内障も初期のうちは点眼で進行を抑えます。日常生活に支障が出た場合は水晶体を人工レンズに替える手術を行います。術後は症状が改善します。また、白内障の手術は急性緑内障の予防にもなります。

予防法は?

残念ながら緑内障の予防法は特にありません。自覚症状が出た場合はかなり進行していることになるため、定期的に検査を受けることをおすすめします。白内障では、サングラスをかけるなどして紫外線を浴びすぎないようにしたり、糖尿病にならないよう生活習慣に気をつけましょう。


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昼間にやたらと眠くなる方は要注意です。

睡眠時無呼吸症候群で注意すべきは、年齢よりも肥満度です。若い方でも肥満があると起こりやすくなります。ただ、これまで通りの食生活を続けても加齢とともに代謝は落ちてくるため、中高年以降の方の割合は高くなると言えます。つまり生活環境によって誰にでも起こりうるのが睡眠時無呼吸症候群なのです。数年で一気に体重が増加した方、仕事などの作業中にも関わらず昼間にやたらと眠くなる方は特に注意が必要です。ご家族からいびきや無呼吸の指摘をされたら、早めに専門医へ相談してください。


主な症状は?

夜間、睡眠中にいびきや無呼吸が起こる症状です。低酸素状態となるため、放っておくと心拍数が上がり、心臓への負担となります。また、熟睡できないので睡眠不足の状態にもなります。これにより日中、強い眠気に襲われることがあり、運転される方は居眠り運転にもつながり危険です。自分では気づきにくいため、ご家族からの指摘で受診される方がほとんどです。

原因は?

特に多いのが肥満です。二重顎など首周りの脂肪が多いと気道が狭くなり、舌根沈下という舌の根元が咽頭に落ち込んで気道が閉塞する状態になりやすくなります。また、鼻炎などで鼻が詰まっている、顎が小さい、扁桃肥大など口腔内が狭くなっている事が原因となります。筋肉も関係するため加齢による筋力の衰えも考えられます。

治療法は?

鼻にマスクを当てて止まった呼吸を再開させる持続式陽圧呼吸療法(CPAP)が主ですが、顎を前に出して舌根沈下を起こしにくくするスリープスプリントというマウスピースを作成することもあります。また、扁桃腺を摘出したり喉の粘膜を広げる咽頭形成という手術を行うこともあります。

予防法は?

肥満の解消や鼻炎の治療など、まずは素因を取り除くことに努めましょう。仰向けに寝ると均等に舌が落ちてくるので、軽症の方は横向きに寝ることも一つの方法です。睡眠時無呼吸検査は検査器によって一晩で測定可能ですが、睡眠アプリなどを使用してご自身のいびきの状態を把握してみるのもいいかもしれません。


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