Vol.52_猛暑から命を守る「クーリングシェルター」

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「クーリングシェルター」を
ご存知ですか?

熱中症特別警戒アラートが発表されている間、
危険な暑さをしのげる場所のことです。
今、広島市薬剤師会の加盟薬局の中にも、
この協力施設になる動きが広がっています。


●クーリングシェルターが誕生した背景

近年、地球温暖化の影響により日本の夏は過酷になり続けています。気象庁によると、35℃以上の「猛暑日」は各地で過去最多を記録する年が続いており、都市部ではヒートアイランド現象も深刻です。熱中症で救急搬送される人数は毎年数万人にものぼり、中でも高齢者の重症化や死亡は社会問題となっています。そこで国は、「熱中症警戒アラート」や「暑さ指数予報」などの配信サービスの提供をはじめ、さらに現行より一段階上の「熱中症特別警戒情報(熱中症特別警戒アラート)」が新たに創設されました。こうした現状から、住民が誰でも安全に避暑できる「クーリングシェルター(指定暑熱避難施設)」の必要性が高まり、各自治体の主導で開設が進められています。


●クーリングシェルターとは

「クーリングシェルター」は、熱中症特別警戒アラートが発表されている期間中、人々が自由に立ち寄り、涼をとることができる空調の整った施設です。自治体が指定する公共施設や図書館、ショッピングモールなどが対象となることが多く、特に高齢者や子ども、基礎疾患のある人といった熱中症のリスクが高い層を守る目的で整備されています。シェルターは誰でも無料で利用でき、スペース内では休憩や水分補給ができます。ただし、開放時間は当該施設の開館・営業日時の範囲内です。また、飲料水は各自での準備が必要です。なお、広島市のクーリングシェルターには、施設の入口などに案内ステッカーが掲示されています。

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©広島市


●薬局としてのクーリングシェルター

広島市薬剤師会では、地域住民に身近な薬局・薬剤師が熱中症対策に協力できるのではと考え、令和5年度に薬剤師の熱中症予防のアドバイザー育成と熱中症予防対策事業を実施しました。アドバイザーについては、希望する薬剤師が大塚製薬㈱の開講する講座を受講し「熱中症対策アンバサダー」に認定されました。また熱中症対策事業については、来局された方に資材を使って熱中症や水分補給のポイントについての説明を行いました。さらに令和6年度は広島市と協定を結び、加盟薬局のうち49局がクーリングシェルターの開設を行いました。令和7年度は、前年度の49薬局に加え、6月に再度募集を行い、より多くの薬局にクーリングシェルターとして参加してもらう予定です。薬局がクーリングシェルターであることは、単に暑熱避難施設であるだけではなく、熱中症対策について熱中症対策アンバサダーをはじめとした薬剤師に相談することができます。また、薬局内には「オーエスワン」等の経口補水液も販売しているため、軽度から中等度の熱中症(過度の発汗や発熱等)の症状がある場合にもすぐに購入でき、熱中症の重症化を防ぐことが期待されます。


●おわりに

熱中症特別警戒アラートが発表されたときには、まずは外出はできるだけ控え、暑さを避けることが大切です。その上で、やむを得ず外出する際に危険な暑さに見舞われた場合には、気軽にクーリングシェルターを利用しましょう。猛暑はすでに「自然災害」のひとつと見なされる時代に突入しています。また熱中症は、特に梅雨明けの蒸し暑く、急に気温が高くなる時期から救急搬送者数や死亡者数が急増しています。猛暑から命を守る最後の砦として、身近な地域にどんなクーリングシェルターがあるかをぜひご確認ください。そして熱中症についての不安や疑問があれば、かかりつけ医やかかりつけ薬剤師までご相談ください。


薬剤師会_DATA_201910