Vol.35_ワクチン・予防接種の重要性について

35_ワクチン・予防接種の重要性について

新型コロナウイルス感染症により、「ワクチン」という言葉をこれまで以上に
耳にするようになりました。では、ワクチンとはいったいどんな役割を持ち、
予防接種にはどんな意味があるのでしょうか。今回はそんなおはなしです。


●ワクチンとは

私たちの日常には、感染症などさまざまな病気を引き起こす病原体が存在します。これが体内に入ると病気になったりしますが、一方で、私たちの体には一度入ってきた病原体が再び体の中に入ってきても病気にならないようにする仕組みがあります。これが「免疫」です。そしてこの仕組みを利用したのが「ワクチン」です。ワクチンを接種すると、あらかじめウイルスや細菌に対する免疫(抵抗力)が体の中に作られ、病気にならない、なっても症状を軽くすることができます。

●ワクチンの種類

ワクチンは大きく「生ワクチン」と「不活化ワクチン」に分けられます。生ワクチンとは、病原体となるウイルスや細菌の毒性を弱めて作られた製剤で、弱毒化された病原体が体内で増殖して免疫を高めていくので、接種回数は少なくてすみます。不活化ワクチンとは、病原体の病原性をなくして作られた製剤で、安全性は高いですが生み出される免疫力は弱いため、何回かの追加接種が必要となります。

●予防接種の役割

ワクチンを接種することを予防接種と言いますが、予防接種には「個人防衛」「社会防衛」という2つの役割があります。予防接種を受けるとその病気に対する免疫が作られ、その人の感染症の発症そのものや重症化を予防することができます。そして、多くの人が予防接種を受けることで免疫を獲得していると、集団の中に感染者が出ても流行を阻止することができます。これが「集団免疫」です。また、多くの人が予防接種を受けることは、ワクチンを接種できない人を守ることにもつながり、検査・治療費に比べ費用も安くすむことから医療経済面でも大きな意義があるとされています。

●ワクチンで防げる病気

ワクチンで防げる病気のことを「VPD」と呼びます。医療大国と言われる日本ですが、実はワクチンの接種率は欧米などと比べて低く、多くの子供達がVPDにかかり健康被害を受けたり命を落としたりしています。これには、他の国では接種できても日本では使用できないワクチンがあったり、任意接種によってお金がかかってしまうといった要因があります。金銭的な事情や感染リスクから、子供に定期接種を受けさせないケースもあるようですが、ワクチンはVPDにかかりやすい時期と、ワクチンを安全に接種でき高い効果が得られる年齢を考慮して接種できる月齢や年齢、接種回数、接種間隔が決まっています。大切な子供達の命を守るためにも子供達の予防接種スケジュールは守るようにしましょう。また、VPDは成人にもあります。シニア世代であれば、特にインフルエンザや帯状疱疹、肺炎球菌感染症などのワクチンは忘れず受けるようにしましょう。

●予防接種を受けた後は

予防接種後、1時間以上後であれば入浴は問題ありません。その際、注射した部分を強くこすったり揉みこんだりしないようにしましょう。また、接種後24時間以内は飲酒や激しい運動は控えましょう。また、体に現れる確率は低いですが、ワクチンには副反応があります。一般的な副反応としては微熱や接種局所の発赤・腫脹・疼痛などで、いずれも一時的なものが多いですが、高熱やけいれんなどの症状があれば速やかにかかりつけ医に連絡しましょう。

現在、新型コロナウイルス感染症のワクチンもできるだけ早く、そして安全に接種できるよう整備が進められています。ワクチンへの正しい知識と理解を持ち、間違った情報に惑わされないよう注意しましょう。


薬剤師会_DATA_201910