山田院長(以下山田):上田先生、まずは中年以降、発症リスクも上がるとされる睡眠時無呼吸症候群について教えてください。
上田院長(以下上田):海外では以前から問題視されてきた睡眠時無呼吸症候群ですが、日本で広く注目されたきっかけは、新幹線の運転士が居眠りをして列車が停止しなかった事故でした。日中の強い眠気や意識消失、朝起きても疲れが取れない倦怠感など“睡眠の質が悪い”ことによる症状が特徴です。コロナ禍以降、家族と過ごす時間が増え、いびきを指摘されて受診する人が増えました。いびきは自分では気付きにくいですが、実はいびきがある時点で“気道が狭くなっているサイン”。放置は様々な疾患のリスクを高めます。患者さんの約8割は男性です。飲酒習慣がある人が多く、体重増加や、アルコールで舌が落ち込みやすくなることが要因ですね。夜中にトイレに行く回数が増え睡眠が分断されることも、症状を悪化させます。
山田:診断はどのようにされるのですか?
上田:診断には一晩機器を持ち帰っていただく検査を用い、無呼吸・低呼吸の回数で重症度を判定します。中等症以上ではCPAP(シーパップ)という機械で空気を送り、気道を広げる治療が基本。合う人には非常に効果的で、1日4時間以上使うと心臓や脳の病気が予防できます。多くの人は生涯継続が必要ですが、大幅な体重減少で無呼吸が減った人や、口呼吸の癖がある人がCPAPの長期使用で鼻呼吸の習慣がついてやめられるケースもあります。治療としては体重を減らす、鼻の治療をする、扁桃を切除するなどの方法もあります。また横向き寝が推奨され、検査では「右向き・左向きのどちらが良いか」まで分かります。
山田:歯科領域でも、軽症の方に用いる“スリープスプリント”と呼ばれるマウスピースがあります。上下の歯形を採って作り、下顎を前に出すことで舌根の沈下を防ぎ、気道が確保される仕組みです。
上田:広島では、このマウスピースを作れる歯科医院はまだまだ少ないですよね。
山田:スポーツ用とは全く異なるタイプで、個々に調整が必要なため対応できる歯科医は限られます。また“食いしばり”が強い人は下顎が後ろに入り、無呼吸を起こしやすい。そういう方には、私の医院では“西村式スプリント”という、食いしばり矯正と姿勢改善を兼ねたタイプを使うこともあります。食いしばり改善が目的ですが、結果的に睡眠の質が上がる人も多いですね。
上田:軽症でマウスピースを使っていても食いしばりが強い人は装置がすぐ傷むので、歯科との連携があると安心です。姿勢の悪さや口腔習慣の問題を歯科でみてもらえるのも大きいと思います。br>
山田:そうですね。スリープスプリントは上下一体型で、やや受け口ぎみにするため歯に負担がかかりやすく、上下が固定され遊びがないので、しんどいと感じることがあるのがデメリットです。こうした点からも定期的な診察は大事ですよね。
上田:睡眠時無呼吸の患者さんを診ていて気になるのは、歯科に普段通わない人が多いこと。プラークが多かったり歯周病が進んでいるケースも少なくありません。歯周病は動脈硬化とも関係するため、心臓病リスクの観点からも歯科受診は非常に重要です。口の状態は生活習慣の鏡でもあり、磨き方が雑な人は生活習慣病全体へ注意が必要だという“気づき”にもつながります。
山田:逆に、歯科には健康な方も来られますが、内科のかかりつけがない人も多いんです。歯科と内科が連携することで、睡眠や心臓、生活習慣病まで幅広くサポートできると良いですね。