神経内科専門医・指導医、医学博士/六車 一樹さん

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神経内科専門医・指導医、医学博士
六車 一樹さん

【プロフィール】
1985年、広島県生まれ。
小学生時代、米ミシガン州と府中町で暮らす。
修道中学・高等学校スクールバンド班でユーフォニアムを担当し、広島大学霞管弦楽団では学生指揮とトロンボーンを務める。
広島大学医学部・大学院を修了。
広島大学病院で研修し、広島市民病院や中国労災病院を経て、現在は広島市立リハビリテーション病院副部長として脳神経内科に従事。
岡野泰子氏に師事しドイツ歌曲を学び、ピアニスト森岡美和子氏との演奏活動を継続。
広島大学霞OB管弦楽団“昴”や、広島大学霞管弦楽団(霞キャンパスの現役生)の指揮、楽団Lindenbaumでの編曲・器楽奏者・テノール歌手としても幅広く音楽活動を行っている。

(撮影:空尾 伊知郎)


人に寄り添う、芸術と医学のハーモニー。


 六車一樹さんは、生物学への興味から理学部を志していましたが、両親から「人と関わる仕事が向いているのでは」と勧められ、医学の道へ進みました。難解で不確実性の高い神経内科を選んだのは、診断の曖昧さの中にこそ学問的な奥深さとやりがいを感じたからだといいます。

 神経内科の病気は、認知症やパーキンソン病など完治が難しいものが多く、治療よりも「寄り添う医療」が求められます。六車さんは「治せなくても逃げずに向き合い続けることが大切です。最善を尽くしていれば、最後には患者さんやご家族が感謝してくださいます」と語り、患者の人生に伴走する姿勢を何より大切にしています。

 認知症については「根本的に治る病気ではなく、共に生きていくもの」と捉えています。検査だけでは判断が難しく、問診や生活背景の理解が欠かせないといいます。加齢による物忘れと認知症の境界は曖昧ですが、「できないこと」ではなく「できること」に目を向け、自分らしく生きることが重要だと強調します。また、病を受け入れながらも豊かに暮らすためには、本人のアイデンティティを保つことが大切であり、周囲の理解も欠かせないと語ります。病気を“失うもの”としてだけでなく、“その人らしく生き続けるためにどう支えるか”。その視点が、六車さんの医療の根底にあります。

 一方で、六車さんのもう一つの大きな柱が音楽です。学生時代から続ける指揮や、ユーフォニアムなど金管楽器の演奏、ドイツ歌曲の学びなど、音楽は人生の中心にあります。「芸術か、死かというほど大切なものです」と語るほどで、医師としての仕事にも良い影響を与えているといいます。音楽は一人では成立せず、人とのつながりの中で生まれるもの。そこに医療と共通する喜びを見出しています。現在は妻や子どもと一緒に演奏する時間も増え、家庭の中にも豊かな音楽文化が息づいています。音楽を通じた人との出会いも、六車さんの人生を鮮やかに彩っています。

 昨年は医学博士も取得し、研究にも意欲的に取り組んでいます。「患者さんの人生に寄り添い続けたい」と語る一方で、プライベートでは「音楽と生物学をさらに深めたい」と学びへの情熱を燃やしています。学び続ける姿勢は、医師としてだけでなく、一人の人間としての魅力にもつながっています。

 「勉強はお金のかからない最高の娯楽です」と語る六車さん。医療と芸術、そして人へのまなざしを携え、これからも豊かな人生を歩み続けていきます。その歩みは、静かでありながら力強いものです。




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「演奏者に信頼され、認められなければ指揮はできません。」と語る六車さんは、J.S.バッハをこよなく愛する指揮者です。
(撮影:西田英俊)